オレは自己嫌悪に頭を抱えた。出来ることならどっかに頭を思いっきり打ち付けて記憶を飛ばしたい衝動をどうにか堪え、じっと蹲る。ありえねェ。何でだよ。嘘だろう?誰か頼むから嘘と言ってくれ。
「……スパーダ、」
おずおずと心配そうな声が上から降りかかる。そしてそばにしゃがみ込んだような気配。そっと触れられたのは彼女の小さな手だ。思わず顔を上げれば聖母も顔負けの慈愛に溢れんばかりの笑顔。にっこり。そう笑いながら、
「やっちゃったね……」
なんて嬉しそうに言うもんだから、オレは自分の頬が羞恥で染まったのが分かった。もしかしなくとも見られていたのか。よりによってこいつに!このアホに!今度はこいつの頭をどっかに打ち付けて記憶をふっ飛ばしたいのをぐっと堪え、オレは小さな、押し殺した低くドスの効いた声で問う。
「……見たのか……」
「?……うん!」
心底不思議そうな顔を浮かべるこいつをぶん殴りたい。誰の所為だと思ってやがんだ。
「もっちろん見たよ、スパーダが鼻歌でコートの中にはァ、魔物が住むのォって歌ってたところ!」
──正直死にたい気分だ。