「ねえ、お願い」
「むしろ一生のお願いだから…!」
「スパーダがもししてくれたら…私…」
そんな過激なことを瞳を潤ませ小首を傾げて上目遣い(ここ重要)をしつつ、挙句わざわざ選んだのかだぼだぼとなっている洋服の袖から覗くのは指先のみの、そんな様子で俺を見つめる。かなり芸が細かい。ぶっちゃけ今すぐにでも抱きしめたいくらいなのだが、今そんなことをしてしまったらの思う壺だ。いや、絶対こいつはそれを狙っている。普段はこんなキャラじゃあねェんだから。
「っ、おまえ…!」
「たかが1分の我慢なんだから…ね…?」
そう言って伸ばされる腕。えへへ、と少し悪戯気に、でもどことなく寂しそうに笑って見せる。そしてついと伏せられる目。上から見ている俺からすれば、つまり、ああ睫毛長ェなとかそんなことしか考えられなくなっていて。心臓もそろそろ破裂寸前でかなりヤバイ。でも、それでも理性を押さえつけるたった一つの理由と言ったらそれは──
「…ッ、なんで俺が!みんな目が死んでるとかコートの中には魔物が住むとか!そんな歌を歌わなきゃなんねーんだッ!」
「うわぁあん!スパーダのドケチ!いいじゃないか、それくらい歌ってくれたってぇえーー!!」
──誰だって御免だ、そんな歌。
中の人