ダイチくん!
遠くからそう呼びかけるとダイチくんはいつもみたいに緩慢な動作で振り返ると僅かに笑みを浮かべ、私が息を切らせて彼の元に駆け寄るのをじっと待ってくれる。
「どうした?」
そう優しく問うダイチくんの胸に私は何も言わずに飛び込む。わ、と小さくあがった戸惑いの声に内心笑みを漏らしつつ、ただぎゅっと抱きつく。ダイチくんもどうしたんだ、何かあったのか…?とか言いつつもおずおずと私の背中に腕を回す。それがくすぐったくて温かくって、思わずくすくすと笑いながら私はこの腕が永遠でありますようにとただ願った。
(世界をくるむ)