「…………、」
そう名前を呼びながら近づいてくる顔はどこか熱っぽくて、浮かされたような顔だった。思わず身を引こうとして、そう言えば自分の肩には彼の腕が押さえつけるようにして乗っていることに気付いた。逃げられない。
本能的にそう悟り、さてどうしたものかと私は思案する。そう思っている間にも私の視界を埋める顔の面積はどんどん広がっていく。それを意識した途端私の顔も彼の顔みたいに熱く赤く熱っぽくなってきたのが分かった。恥ずかしくてしょうがなくて思わず目をぎゅうと瞑った。
「……と言う夢を見たんだけど、ワクどうしたらいいかな」
「知らねーよ!」
(淡くゆるやかに消える虚像)