「ワクくんワクくん」
「んー?何だ?」
「ワクくんはサッカー好きだった?」
「……どう、なんだろうな。そりゃ嫌いって言ったら嘘になるけどさ。好きかって言われても困るんだよなァ…」
「普通ってこと?」
「それもなんか違うんだよ」
「ふぅむ、じゃあどうなんだろうね。そんな好きだとか嫌いだとか陳腐な言葉じゃ表せないような感じ?カンジ?」
「そうそうそんなカンジ!……って違ぇよ!それは人の名前だろ!感じだよ!発音違うっつーの!」
「うふふふふ……!流石はワクくん、ツッコミは健在のようだね……!しかもノリツッコミだなんてね……!」
「頼むからその怪しい笑いは止めてくれ……」
「いひひ、嫌と言われて止めるような人間じゃないよー。きしし!うひょひょ!」
「なんか漫画みてぇな笑い方だなー……って言うか顔引きつってんぞ。無理すんなって」
「あは、心配させちゃった?!ねえ、もしかして心配してくれた!?」
「あーはいはい、心配シマシタヨー」
「うっわ、超スティック読みだよワクくん。ちゃん傷ついちゃう!」
「お前はルー大柴か」
「後半は無視でっかワクくん」
「だって、そんくれーで傷つくようなタマじゃねえじゃん」
「ま、そうだけどね」
「だろ?」
「……でもさ、いくら私だってワクくんが死んじゃったら泣いちゃうんだよ。辛くて辛くてしょうがなくてボロボロになっちゃうんだよ」
「……」
「私、あの時ほど風邪引いたことを恨んだことはないね。だって、そしたら私だってジアース乗ってただろうし」
「……、」
「私だって闘えるよ。でも、みんなが入れてくれないの。“せめてだけは”って言って仲間外れにするんだ」
「……」
「でも、そんなみんなも死んじゃった」
「……、」
「地球を守るって何?ねえ、実際に隠させたヒーローになってどんな気持ち?」
「……ごめん、ごめんな……」
「不可抗力だったのかもしれない。でも、それでも!残された人の気持ちも考えてよバカ……」
「ごめん、何言っても無駄かもしんねぇけど……ごめん」
「……うぅん、こっちこそ、ごめん。言い過ぎだね」
「いや、」
「でもね、私、嬉しいんだよ。ワクくん、こうやって会いに来てくれたじゃない。それだけで幸せなんだ」
「…」
「そりゃわがまま言えば抱きしめて欲しいとか触れたいとかちゅーしたいとか色々あるけどね、でもこれでいいんだ」
「オレも、だ」
「うふふ、それは嬉しいな、じゃあせめてさ、」
嘘でもフリでもいいから
抱きしめてよ
(それはあくまでフリだったけれど、酷く温かく感じた)