トントントン、
 隣から聞こえるのは軽快に調子よく刻まれるリズム。包丁がまな板を叩く音はどこか実家を思い出させて温かい。僕ははぁ、と小さくため息をつきながら鍋の中身をかき混ぜる。
 今日の晩御飯の当番は僕とだ。基本的に人数が多いので当番は2人。メンバーによっては3人になったりもする。例えば僕とスパーダだけの時とかは誰かが助っ人に入る。前々回やらに二人でやったら……うん、ちょっとアレだった。みんなには本当に悪いことしちゃったなぁと思う。
、コンソメ入れたよ」
「ありがとう。じゃあそのまま様子見ながらかき混ぜて」
「了解っ」
 ちなみに僕たちが今作っているのはチーズスープとサラダ、ペスカトーレだ。は隣でさっき切っていたシーフードや野菜を炒めていた。僕はと言うと出来上がりつつあるチーズスープをかき混ぜ、ほんのり香ってきたチーズの濃厚な香りに思わず鼻がひくつかせるだけだ。
、美味しそうだよ!」
「ん、本当だ。いい感じ……っと、こっちも大体出来てきたからそろそろ盛り付けてていいよ」
「分かった。あと何かすることある?」
「そうだなぁ、じゃあドレッシング作ってサラダに掛けておいてくれる?そこにメモと材料あるから全部混ぜちゃって」
「はーい」
 僕はの手書きのメモと目の前の材料を見比べながらそれらを混ぜ合わせる。どうやらシーザーサラダを作るみたいだ。わわ、美味しそうだなぁ、これならみんなきっと喜んでくれるよね!
 わぁ早くご飯にならないかなぁなんて顔を綻ばせているとがひょいと僕の顔を覗き込んだ。わ、とびっくりして仰け反るともびっくりしたのかきょとんと目を見開いた。そのままこてんと首を傾げて、そんな嬉しそうな顔してどうしたの、なんてにへらと笑って問いかける。
「あ、あの、もうすぐご飯だから嬉しくって」
「そっか、ルカは食いしん坊だなぁ。……あ、ちゃんと作ってくれたんだねありがとう」
「ど、どういたしまして……!」
 僕がそう言う間にもの背中はどんどん遠ざかって、大きく手を振りながらご飯出来たよー!と大声でみんなを呼んでいた。あ、と伸ばしかけた手はゆっくり下ろされ、綺麗に野菜の盛り付けられたお皿に伸びる。そのまま摘んだプチトマトをそっと口に放り込むとぷちゅと潰れながらドレッシングと味が混じり合った。うん、これならみんな美味しいって言ってくれるに違いないよね。
 そんなことを思いながら僕はちょっと悲しくなった。



君と僕とシーザーサラダ
(相手にして欲しいお年頃なのです)