あふぁ。
 そんな欠伸に振り向けば、そこにはしょぼしょぼした目を擦るが居た。首を振って目の間を指で解すようにして擦ってもどうやら眠気は吹き飛ばないみたいだ。どうしたんだろう、昨日は夜更かしでもしたのかな。本でも読んでたんだろうか。そう頭の中にクエスチョンマークを浮かべる僕に気付いたらしいはふらふらした足取りでこっちにやってきた。
「おはようルカ……」
「大丈夫?眠そうだけど」
「……ん、昨日本読んでたから……。ちょっとのつもりだったんだけど、気付いたら朝だった……」
 やっぱり。
 自分の予想が当たってちょっとだけ嬉しかった僕は思わず笑みを浮かべる。それを見たが怪訝そうな顔でなんで笑うかなぁ……と呟いたので、僕は慌てて弁解する。
「ち、ちち違うよ、ただ、僕は、がやっぱり本読んで夜更かししちゃったんだなって思ってたから、予想が当たって嬉しかったんだ……っ」
「……んー、そっか……」
 納得したのかしてないのか良く分からないけど、はそう言ってからまた大きな欠伸をした。涙腺を刺激された所為でじわりと目尻に涙が溜まったのに本人は全然気付いていないみたいだから、僕はそっと手を伸ばしてそれを拭ってあげた。
「目尻に涙溜まってたよ」
「……うん、」
「やっぱり眠そうだね。平気?」
「……ありがとう。平気、だと思う……」
「うーん、全然平気そうじゃないけどなぁ。そんなんじゃ戦闘の時にすぐやられちゃうよ?」
「んー……分かってるけど……眠いんだよね……」
 そう言ってにへらと笑ったはやっぱり酷く頼りない。ちょっと小突かれただけでも倒れてしまいそうだ。現に何もしていない今でも足元は危なっかしい。
「ちょっと寝たらどう?」
「……うん、そうする……」
 あふ、とまた欠伸をして目を擦るは正直可愛い。僕がまた浮かびそうになる笑みを押し殺していると、レンはかくんっと前後に大きく頭を揺らし、そのままずるずるとへたり込む。
「わ、だ、っ大丈夫!?」
「ちょっとだけ背中、貸して……」
 ごめん、と呟かれた言葉に僕はかぶりを振ってが寄りかかれるように背中合わせに座り込む。背中に感じる熱が温かい。こてんと当たったのはの頭だろうか、なんて考えているともぞもぞとが身じろぎするので、なんだかちっちゃい子どもみたいで可愛いなんて思ってしまう。そんなこと、本人に言ったら怒られてしまうだろうから言わないけど。ぷく、と風船みたいに膨らむ頬がすぐに想像出来た。
「ねえ、……──」
 そう声を掛けようとしたのだけど、すぐに止めた。その代わりに、聞こえ始めたの寝息にこれって信頼されてるのかなぁ、なんてちょっと自惚れてみる。
 風が、気持ち良い。