「出来ないくせに助けるだなんて傲慢だ」
 そうきっぱりと言い放った少女に僕は何も言えなかった。何も言えずにただ見つめるだけの僕を彼女は無感情に視界におさめ、そして同じことをもう一度言った。その瞳には諦めも不安も後悔も恐怖も何も含まれてなどいなくて、ただ事実を告げているだけだった。
 ──そう、僕には彼女を救うことなんて出来ない。

 それから僕は彼女に言われたからというわけではないのだけど、田中さんと一緒にジアースの契約を結んだ。これで遅かれ早かれ死ぬことは決定してしまったのだけど、だからと言って特に感じることはなかった。元々軍人なんて消耗品であって、すでに死の契約をしているようなものだ。今更結びなおしたところで何も変わらない。ただ、次のパイロットは彼女だったから、助けられなくとも見送ってやることは出来るなとだけ考えてから、いつもどおりの笑みを浮かべて僕は子供たちを迎えたのだった。



(ワールドエンド)