オレには幼馴染が居る。
 すぐににへらっと頼りない笑い方をするヤツだ。すげー美人って訳ではないけど、よく見れば整った方だと思う。…ま、恋愛対象にはならないけどな。
「功、臨海学校どうだったー?」
「あぁ?…うーん、まぁまぁだな。別にフツーだよ」
 そう言ってひらひら手を振って見せると、幼馴染はあのにへらとした笑みを浮かべて、そっか楽しかったんだったら良かったねえと言う。
「…あ、それよりよー」
「ん、何?」
「オレ、好きなヤツが出来たぜ!」
 そう満面の笑みで言ってやった。こいつ、初恋もまだだとか言ってたから内心勝った、と言う気持ちでいっぱいになった。それを聞いたあいつは一瞬びっくりしたような顔をしたかと思うとまた顔を弛緩させた。あれま、好きな人が出来て良かったねー。先越されちゃったなあ。そう言いながらまた頼りなく笑う。
 ……なあ、それが何時も通りの笑みだったはずなのに、どこか翳りが入っていた気がしたのはオレの気のせいか?



(人知れずかみ殺した思い)