かたかたかたかた…
ミシンの音だけがこの空間を支配している。そんな幻想すら抱かせるのはやはりナカマの表情がふざけて声を掛けるのさえいけない、邪魔をしては駄目だと思わせるくらいに真剣だったからだと私は思う。綺麗に裁断された布がみるみるうちに縫い合わされ、予想できなかった形になっていくのを見るのはとても面白い。自分じゃ到底出来ないような作業をなんでもないことのようにこなすナカマはやっぱり、すごい。
感心のあまりため息を吐こうとしたのさえも無理矢理押さえ込み、静寂を壊さなかったことに安堵したときだった。
「……間に合う……かな……」
「へ?」
「あ、いやなんでもないよ。早く完成させたいなーって思っただけだから」
「でもあとその袖口を縫うだけでしょ?間に合うも何もないと思うけどな」
「違う違う、全部で15着作りたいの。しかも今すぐ」
「15!?今すぐ!?……なんでまたいきなりそんなことに?」
そう問うとナカマは少しだけ気まずそうな顔をしたかと思うと、言葉を選んでいるのか途切れ途切れに、
「あ、うぅん、が気にすることじゃないから……ね?」
だなんて言う。
……いやさ、別に言いたくないなら良いんだけどね?でもなんかそれはそれでなんとなく寂しい、かなー……なんて。だって幼稚園から今までずっと一緒に居たわけじゃない?そりゃ隠しごとは絶対なしだなんてそんなことあるわけないし、私だってナカマに対していくつか隠しごともあるけど……ってあれ、なんか何言いたかったのか分かんなくなってきたぞ。
「……?」
「う、あ、……うぇ?な、……何?」
気が付くとミシンの音は止んでいた。ナカマが心配そうに私の顔をのぞき込む。私は少し仰け反りながらも、にへらっとナカマ曰く“だらしのない笑顔”を浮かべる。最近、自然学校で仲良くなったらしい友達とばっかり話しているのがつまらないなんとそんなこと、……ああ、もしかしなくてもこのもやもやしたのってあれかな。友達がこう、自分から離れていくのが寂しいだとか、顔も知らない相手に対する嫉妬だとかそんなどろどろした類のものなのかな。だったら、なんとなく、恥ずかしい。
「?……怒ってる?」
「あ、違う違う、考えごとしてただけ」
「……ごめんね、これは私の問題だしただの自己満足だから、」
「もう、だからいいってばぁ!私だってナカマに話せないことあるしー?」
これは事実。特にさっきのことなんて話したら顔から火が出るどころか火柱が立つ!なんとなく気持ち悪いもん!
「……本当?」
「ほんとほんと!」
「例えば?」
「うえ?」
「例えばが私に言えないことって?」
「う、え……っと、それは、……ってナカマ!それずるい!私だけ聞くなんてー!」
「あはは、ごめんごめん。冗談だよ」
もうなんだよそれ!なんて笑い合う。なんかナカマのかんわいー笑顔を見てたらもうさっきのもやもやと気まずかった雰囲気も何もかもがどうでも良くなっちゃったよ。明日もまた笑い合えればそれでいいや。ねえ、ナカマ!
それは儚く脆い願い