ああ、なんて相反する思いなんだろう!


「ガイー」
「お、どうした?」
「うんにゃ、なんとなく呼びたい気分だったのだよナイスガイ。…あ、ちなみにガイの名前と掛けてたりして」
 なんて言いながら悪戯気に笑って見せればそんなこと解説されても困るぞ、なんて言われる。私もそりゃごもっともで、とまた笑いながらガイの隣に腰掛ける。こっそりと彼のために50センチばかり距離を置くのは忘れない。こう言うのは先にやっておくと傷つかずに済むのである。
「…はー、それにしても今日は言い天気だなあ」
「そうだね、こんな時はガイ弄りに限るよねー」
「!ちょ、、」
「はっはは、嘘に決まってるじゃあないか。そーんな慌てなくても」
 いいだろう?
 そう言って意味ありげににんまりと笑みを深くする。ずい、と顔を近づけるそぶりをすれば、びくん、とガイの肩が揺れたのが分かったから、私はそのまま何もなかったかのようにそっと身を引く。いけない、やりすぎちゃうところだった。すぐ調子に乗って“今日は平気かもしれない”なんて淡い無駄な希望を懲りずに抱いてしまうのだから、自分ってばとんだ阿呆だなぁ、と思う。そんな心情を誤魔化すように思わず自嘲の笑みが漏れるのが分かった。
「……?」
「……ん、あ、あぁ、……何?」
「あ、いや、なんか様子が変だからさ」
「残念。これは元からだよナイスガイ」
「おまえ、しつこいな!」
「止めてくれって?そりゃ無理な相談だよ。今日のベストオブガイ’sワードだからね」
 ベストオブってなんだそりゃ…と呆れたように笑うガイに合わせて私もにこりと笑った。大丈夫、明日こそはきっとこの距離も数センチ詰められるかもしれないのだ。いずれ、いずれはきちんと何の気兼ねも隣に座れるようになれるはずなのだから。ふふ、とさっきとは別種の笑みを浮かべる私に不思議そうな視線を送るガイに私はひらりと手を振って見せた。

「ああ、そう言えばさっきルークお坊ちゃまがナイスガイを呼んでたよ」



矛盾を抱えた私は今日も笑う
(そう言うのは早く言え!と慌てて飛んでいった君の背中を見つめながら)