ぎゅううぅ。 まさにそんな効果音がぴったりであろう勢いで私はフラフランキーに抱きついた。違った、フランキーに抱きついた。いっけね、多すぎて、まるでフラダンスみたいな名前になってしまった。 「……あぁ?何してェのよ」 「……んー」 だぁれが言うものか。そんなもの秘密に決まっているではないか。べ、別に寂しかったとか、人肌恋しくなったとか、そんなじゃあないからね。動揺なんてしているはずがないでしょう。これは冷や汗じゃあありません、ただの鼻水です!鼻炎なんです! 「いや、鼻水は汚ねェよ!即座に迅速に跡形もなく離れろ!」 「何故鼻水とバレた!チクショー意地でも離れん!つか跡形もなくとか酷くない!?」 「今自分で言ってたじゃねぇか」 「っく、読心術とは恐ろしいものを身につけやがって……!」 「聞けよ!」 嫌ですよーだ。そういう意味も込めてさらにぎゅうと締め付ける。ついでに鼻水も拭いとく……が、あまりの拭き心地の悪さにびっくりした。なにこれちょういたい。赤くなった鼻を押さえながら、私は目の前の凶器を見上げた。だ、誰か迅速にハンカチを持って来るんだ! 「ぎゃああ!何しやがる!てめ、俺も拭くぞ!?」 「サイボーグも鼻水出るの?出せるの?」 「そこかよ!」 ……うん、どうでもいいけどさ、さっきからフランキー雰囲気ぶち壊しだよね。こう、イメージとしてはドラマ的なノリの、やたらロマンチックな抱擁を想像していたはずなのに、気付けばそれと対極に位置するものになっているのは気のせいではないはずだ。……まあ、取り合えず抱きつけてるからいいのだけども。そう思いながら私は腕に込める力をさらに加えた。 「……ッ!」 「ん?どったよオッサン、暑いんだけど。って言うかむしろ熱いんだけど!ちょ、サイボーグの発熱とかマジ勘弁……!」 「……はよぉ、考えてることが声に出てるって気付いた方がいいぜ」 そう言ってぷいとそっぽを向いたフランキーの顔は赤かった。隠せてねええ!隠そうとしてるけどこの体制じゃ無理なことに気付こ…ってなんかゴツイ腕が腰に回ってる!ちょ、待、セクハラで訴えんぞ!? 「ぎゃあああ!離せ、熱いッ!」 「そっちから抱きついてきたんだろーが」 「そうだけどこれは熱いんだってば!」 全く、こやつは私にさば折りをかます気なのだろうか。サイボーグの全力技なんて食らったら死んでしまうじゃないか。これから一緒に居られなくなっちゃうぞ!それくらい気付いてよダーリン! 「……アホ」 「え?」 「ッ、アホっつったんだよアホ!」 「あり、もしやまた声出てた?」 「……うっせーよ」 そう言って拗ねた様子のフランキーは、実はこれでも三十四歳だと言うのだから、全く年齢って分かんないもんだなーと思う。ずっと年上に言うことではないのかとしれないけど可愛いなあ、って。あー、何か勝手に唇が意地悪い角度にとつり上がってきたなー。 「オッサンは素直になればいいよ。ほれほれ、言うてみぃ。それとも恥ずかしいのかな?え?」 「……そう易々と言って堪るもんかっつーの」 そう言ってフランキーはぎゅっと優しく(それでもちょっと痛いけどな!)、抱きしめてきた。顔は見えないけれど、きっと照れているのだろうなーなんて思うと顔がニヤつく。だから私も、ちゃんと力加減のされたソレにきっちりと答えることにした。 馬に蹴られちまえ |