友好的関係を築く第一歩はあいさつ、そして自己紹介である。と言うことで。
「お名前は?」
「かすかは、名前をきくやつがさきに言えって」
「お、言うねえ。私はって名前。覚えてくれると嬉しいなあ」
「へいわじま、しずお」
「静雄くんって呼んでいい?」
「……お前、おれのことがこわくねェのか」
「え、まあ、最初は。でも幽くんのお墨付きなら平気かなーと」
「へんなやつ、」
「失礼だなあ……あ、クッキー食べる?」
ソファにでも座って待っててとだけ言い残して私は台所へ向かう。紅茶いれるの面倒だし、にゃんこだからここは牛乳でも出しておけばいいだろう。多分。
「ほい、どーぞ」
「わ、わりぃ……」
「別に悪いことはないと思うけど」
さくさくとクッキーを貪りながら静雄くんとの生活をどうするかをぼんやりと考える。長年一人暮らしをしていたものだから二人分の食器も洗面具も何もない。つまりまずは生活必需品を揃えて行かなくてはいけないわけだ。ならハンズとかで良いかな。安いし。よし、
「じゃあまずは握手をしようか!買い物はそれからだ!」
「は?」
「え、むしろ何、その不思議そうな顔。はじめましてこんにちはよろしく、ってことで握手しようと思っただけなんだけど」
「いや……お前、おれのこと知らないのか?」
「相手が何でも分かってくれると思うのは大間違いだよ。私が知ってるのは、幽くんの兄弟で、牛乳が好きってこと。出した時目ェ輝いたしね。……あ、あとすごい力が強いって聞いたなあ。うんまあ、それくらいかな」
「なら、手ェにぎられるのこわいとか思わねえのか」
「え?君握手するのにも全力投球なの?それは……もうちょっと加減した方がいいと思うけど……」
「…………やっぱお前、へんなやつだ」
「そう言う静雄くんはさっきから失礼な子だね」
そう何度も人のこと変とか言っちゃ駄目だよ。そう言いながら私はさっきから皺の寄りっぱなしな静雄くんの眉間を人差し指でぐりぐりする。まあすぐ嫌そうに顔を背けられたが。
「お前、やっぱへん」
「変ってゆーな、せめて素敵なお姉さまと言え」
「それ、だいぶちがうだろ」
くく、と。
時間にすればほんの一瞬のことであったが、確かに私は静雄くんが笑うのを見た。今まであんな強ばった顔をしていたのに、だ。ちょっとは距離を縮められたのかしらと思わず私も顔が綻ぶ。
「な、なんだよ、急にきもちわるいな……」
「ふふ、まあ、さっきから言ってるけど、」
──握手、しようね。
有無を言わさずにぎゅうと握り込んだ静雄くんの手はほかほかと温かくて、ずっと握っていたくなるものだった。
「これからしばらく、よろしくねー」
じぶんをしゅじんだと
にんしきさせましょう