「あはは、思ったより時間掛かっちゃったなぁ」
「……ですね」
少し気恥ずかしそうに頬を掻く関さんは少しだけ可愛かった。一回り違う年上の男の人に使うのは違うのかもしれないけれど……。
「ここ。ここが僕のお勧めの場所だよ。たまたま見つけたんだけど、結構いいだろう?」
「……あ」
きらきら。
山の少し開けた場所、そこから見下ろすのは私の住んでいる街だ。高いビル、住宅街、豆粒みたいな車のヘッドライト、細長く走っているのは電車だろうか、ここからだと自分の住む小さな街が一望出来た。あそこの辺りが私の家だろうか。そうぼんやり見つめる夜景の星のひとつひとつに命が宿っているのが、恐ろしい。ああ、と思わずため息とも何ともつかない吐息が零れる。私に守れる、だろうか。あの命を、この世界を、彼らの思いを。余りに漠然とした、大きすぎることにただ途方に暮れるだけの私。砂漠に置いて行かれたような焦燥感と不安、水を求めて彷徨う身体はただ干乾びる。どうしよう、ああ、私は、私、は──
「ちゃん、」
「!」
名前を呼ばれて反射的にびくりと身を震わす。恐る恐る関さんの方を見ると私の方を心配そうに見ていたのが分かった。
「あ、せ、関さん、……」
大丈夫です、そう紡ごうとした言葉は、
「っ、」
「ごめん、ごめんね……」
「せ、きさん……?」
「君たちを守れなくてごめん、頼りない大人でごめんよ」
温かい。
関さんの温もりに包まれる。ぎゅうと、家での私みたいに掻き抱かれた私の身体は関さんの腕の中にすっぽりと納まってしまう。
「何も出来ないのがこんなに歯がゆいなんて、ねえ、本当にごめんね、」
「せき、さん、関さんっ……!」
その一言にぼろぼろと涙が溢れる。堰を切ったようにして雫が頬を伝った。こんなに水が自分の中に入っていたのか、70%の水分が全部流れ出るんじゃないだろうかと思うほどに阿呆みたいに涙が零れた。ああ、この人も同じなんだ。そう思うと酷く安心した。なんて、醜い。でもそれがいとおしい。狂ってる。そう思うのだけど、それより私はこの穴と埋める体温に身を任せた。
ぽかりと開いたそれは穴