「大丈夫かい?」
「あんまり……大丈夫じゃない、です」
「そう、か。ごめんよ君たちには悪いと思っているんだが…」
「ねえ、関さん。死ぬってなんですか、」
「……ちゃん?」
「私どうしたらいいんですか、誰も教えてくれないんです。穴が埋まらないんです、たまらなく不安で仕方がないんです、」
「……ちゃん落ち着きなさい。電話じゃ不安ならドライブでもしながら話そう」
「でも今、遅いですし……」
「たまには羽目を外したって怒られないさ」
 そんなおどけた口調で盛り上げようとする関さん。電話の向こうでは欠伸を堪えつつも柔らかい笑みを浮かべているのが想像できた。
「今更ですけど、こんな夜遅くに、ごめんなさい……」
「んー、それより僕はありがとうの方が嬉しいかな」
「……有り難、う御座います」
「うん、どういたしまして。じゃあ20分くらいで迎えに行くから待っててくれよ」
 ぷつん。
 無機質な音を立てて通話は切られた。ツーツー…と向こう側と遮断されたことを伝える機械音にまた不安が募る。大丈夫、だいじょうぶ、関さんはちゃんと来てくれる。約束したから来てくれる。そう宥めるように自分の腕をさすり、膝を抱え込む。こうでもしないとあのどろどろしたものに押しつぶされそうだった。じわと浮かんだ涙はパジャマの生地に吸い込まれた。